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採用では「他責思考NG」と言うのに、退職者には「他責思考」で片付ける会社の矛盾

事業会社で人事をしていると、ふとした瞬間にモヤモヤが湧いてきます。

それは、採用の場面では「他責思考」をNGとしながら、いざ社員が辞めると、会社側が平然と「他責思考」になるという矛盾です。

採用では“自責思考”が正義

採用の面接では、求職者が前職を辞めた理由について「昇給額が低かった」「人間関係が悪かった」など、会社や他人のせいにするような発言をすると、途端に警戒されます。
「この人、何かあったときに自分を省みないタイプかも」「組織に合わなそう」──そんな印象を持たれてしまう。

特に日本では、“和を乱さない協調性”が重視される文化のため、自分以外を悪者にする発言は「未熟」だと受け取られやすい。


台湾人の同僚との会話で気づいたこと

そんなとき、同僚の台湾人スタッフが私にこう聞いてきました。

「ChatGPTに聞いたら『日本では退職時に本当の理由を言わない方がいい』って言われたんだけど、それって本当? 本当の理由を正直に言うと、“子供っぽい”って思われるって……。」

思わず苦笑いしながら、私はこう答えました。

「本当の理由を聞いて改善するのが本来のあるべき姿。でも日本では“黙って辞める”方が無難かもね。」

なぜなら、正直に「上司と合わなかった」「過重労働がきつかった」と言えば、退職者側の人格や精神論にすり替えられがちだから。

人事の本音:「改善?知ったこっちゃない」

私は今、この会社に対するエンゲージメントが低く、退職を視野に入れています。

だから正直、私が辞めたあとに会社が改善されようが、人事部の仕事が増えようが、どうでもいいと思ってしまう部分もある。

けれど、一歩引いて考えてみたとき、こんな疑問が湧いたんです。

「採用では“他責思考NG”と言いながら、辞めた社員には“あいつはメンタルが弱かった”“協調性がなかった”で済ませていないか?」


それ、結局「会社側の他責思考」では?

本来であれば、退職者の声から会社の課題を拾い上げ、改善につなげるのが人事の役目。
なのに辞めた人には原因を押し付け、自分たちの問題として捉えない──それって立派な「他責思考」ですよね?


退職者を悪者にしていては、会社は成長しない

これまでの日本では、終身雇用が当たり前で、退職は“レールを外れた行為”と見なされてきました。
だからこそ「辞めた人=問題があった人」という前提で話が進むことが多かった。

でも今や、転職は日常茶飯事。キャリアは一つの会社に縛られない。
そんな時代に、退職者の声を“個人の問題”として片付けていては、会社は何も変わらない。

そして改善から目を背け続け何も変わらなければ──次の退職者が出る。
それが連鎖して、いずれ“退職ドミノ”が止まらなくなる。


日本企業はこのままで世界と戦えるのか?

人の入れ替わりが激しくなる中で、組織としての学習や改善を怠る会社に、果たして生き残る力はあるのか?
私は疑問を感じています。

「自責思考」を求めるのなら、会社もまた「自責」であるべき。
採用でも退職でも、フェアな視点を持ち続けられる組織こそが、これからの時代に選ばれていくはずです。

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