「中小企業はやめておけ。」
正直、これが今の私の本音です。
私は新卒で公務員としてキャリアをスタートし、その後BIG4系のコンサルティングファームへ転職。数年後、さらなる裁量権とライフワークバランスを求めて、従業員数50名規模の中小企業へ転職しました。
「もっと柔軟に働けるはず」「自分のアイデアが反映されやすいはず」――そんな期待を持って飛び込んだ中小企業の世界。しかし、待っていたのは理不尽と空回りの連続でした。
今回は、私のキャリアの中で体感した「中小企業のリアル」を、公務員・BIG4との比較を交えながら、忖度なしで書いてみようと思います。
「人が辞める理由」がすべて詰まっていた
中小企業に転職してまず感じたのは、「組織としての土台がとにかく脆い」ということ。
例えば、制度を整えようとしても、それが社長の意向に合わなければすぐに却下される。エンゲージメント調査を実施しても、改善策は「とりあえず福利厚生の充実」という表面的なもの。しかも、導入しても社員の反応は「ふーん」で終わり。反応がないことを逆に評価する経営陣もいて、こちらは「何のためにやったんだっけ?」と首をかしげるばかり。
社員に主体性を持ってほしくて制度を導入しても、「誰かがやるだろう」「どうせ変わらない」の空気が蔓延していて、まるで砂漠に水を撒いているような気分になりました。
「社長の感情=企業方針」という現実
大企業では、どんなにクセのある上司でも、制度やルールである程度はブレーキが効きます。けれど中小企業では、経営トップの一声が絶対。
ある日突然、「もうこれやらなくていい」と言われる。何の説明もなく、積み上げてきたものがゼロに戻る。その繰り返しです。
私は総務人事として社内制度の整備を担っていましたが、制度設計のたびに経営者の「気分」に振り回され、最後は「やるだけ無駄かな」と思ってしまった瞬間もあります。
とはいえ、中小企業のメリットもある
正直に言えば、中小企業にも「良さ」はあります。
トップと距離が近く、チャンスはつかみやすい 動きが速い分、意思決定のスピードは早い 自分の意見が反映される可能性もある
でも、これはすべて「社長に気に入られた場合に限る」んです。
合理性や戦略ではなく、“人間関係の相性”がキャリアを左右する世界。これは、覚悟して入らないと精神的に消耗します。
中小企業に向いてる人・向いてない人
✅ 向いている人
どんな環境でも自走できる人 トップと“うまくやる”のが得意な人 明確な制度がなくても働ける人
❌ 向いていない人
フェアさやロジックを大切にする人 頑張ったら報われる組織が好きな人 「会社=社会の一部」として機能していてほしい人
転職の前に「何を捨てられるか」を決めておく
中小企業が悪い、というわけではありません。
でも、自分の価値観と合わない環境に身を置くと、どんな能力も腐っていくと私は感じました。
中小企業に転職する際には、「何を得たいか」だけでなく、
「何を捨てられるか」を明確にしておくことを強くおすすめします。
私のように「制度で動く世界」から来た人には、それなりの覚悟と自問自答が必要です。
それでもあなたが中小企業で挑戦したいなら――応援します。
ただ、その前に、この現実だけは知っておいてほしいと思います。